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利息制限法


利息制限法(りそくせいげんほう)

1.利息制限法(りそくせいげんほう;明治10年9月11日太政官布告第66号)とは、金銭貸借上の利息の最高利率を規制した日本の法規である。原文はWikisourceの該当項目に当たられたい。本稿では「旧利息制限法」と称する。
2.利息制限法(りそくせいげんほう;昭和29年5月15日法律第100号)とは、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約及び賠償額の予定について、利率(ないし元本に対する割合)の観点から規制を加えた日本の法律である。利限法と略されることがある。本項で詳述。

規制の内容


利息の最高限


総論
金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が次の利率(単利。以下「制限利率」とする。)により計算した金額を超えるときは、その超過部分につき無効である(本法1条1項)。


元本が100,000円未満の場合 年2割(20%)
元本が100,000円以上1,000,000円未満の場合 年1割8分(18%)
元本が1,000,000円以上の場合 年1割5分(15%)
例えば、2004年(閏年)1月23日に500,000円を返済期日同年9月23日、利息年54.9%の約定で貸し付けたとすれば、約定どおりであれば返済期日に元本500,000円と245日分(初日も1日として取り扱う。最高裁昭和33年6月6日判決民集12巻9号1373頁)の利息183,750円(500,000×0.549÷366×245=183,750)の合計683,750円の返済を受けられるはずであるが、利息の契約は制限利率年18%を超える部分につき無効であるため、元本500,000円と利息60,245円(500,000×0.18÷366×245=60,245)の合計560,245円の返済しか請求できないわけである。


利息の天引
利息を天引(貸付額から利息相当額を差し引いた残額の金銭のみを債務者(大ざっぱにいえば借主)に交付し、返済期日に貸付額を返済させるという貸付方法)した場合において、天引額が債務者の受領額を元本として制限利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分は、元本の支払に充てたものとみなされる(本法2条)。


例えば、2004年1月1日に500,000円を返済期日2007年12月31日、利息年18%の約定で利息を天引して貸し付けるとすれば、4年分の利息360,000円(500,000×0.18×4=360,000)を差し引いた140,000円(500,000-360,000=140,000)を交付することになり、約定どおりであれば返済期日に貸付額500,000円の返済を受けられるはずであるが、天引額360,000円は、債務者の受領額140,000円を元本として制限利率年18%により計算した金額100,800円(140,000×0.18×4=100,800)を超えるから、その超過部分259,200円(360,000-100,800=259,200)は元本の支払に充てたものとみなされるため、240,800円(500,000-259,200=240,800)の返済しか請求できないわけである。

みなし利息
金銭を目的とする消費貸借に関し債権者(大ざっぱにいえば貸主)の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他何らの名義をもってするを問わず、利息とみなされる(本法3条本文)。これをみなし利息(みなしりそく)という。ただし、契約の締結(契約書に貼付する収入印紙の購入費用など)及び債務の弁済の費用(振込による返済に伴う振込費用など。これに対して、債権者に生ずる貸付金振込費用は、「債務の弁済の費用」には当たらず利息とみなすべきと解する見解が多い。)は、この限りでなく(同条但し書)、実費の限度では利息とみなされない。


なお、信用保証会社と貸金業者とが、実際の業務運営の在り方からみて実質的に一体と評価されるような場合に、当該信用保証会社の受ける保証料及び事務手数料が当該貸金業者の受けるみなし利息に当たるとされた事例がある(最高裁平成15年7月18日判決判例時報1834号3頁など)。

賠償額予定の制限
金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定(民法420条1項。遅延損害金、遅延利息、延滞利息などと呼ばれるもののこと)は、その賠償額の元本に対する割合が制限利率の1.46倍を超えるときは、その超過部分につき無効とされる(本法4条1項)。賠償額の予定がないときは、賠償額は制限利息の範囲内で約定利率によって計算する(民法419条1項但書、最高裁昭和43年7月17日判決民集22巻7号1505頁)。


違約金は、上記の制限や下記の超過支払部分の取扱については、賠償額の予定とみなされる(本法4条3項。民法420条3項と対照)。

超過支払部分の取扱
債務者は、制限利率により計算した金額を超える利息や、賠償額予定の制限を超える損害金を任意に支払っても、その返還を請求することができない(本法1条2項、4条2項)。これは、債務者は、制限超過の利息、損害金を支払っても、その超過部分は民法491条により残存元本に充当され(最高裁昭和39年11月18日判決民集18巻9号1868頁)、元本債務の存在する限りその超過部分の返還を請求することはできないという趣旨である。そして、計算上元本が完済となったときは、その後に支払われた金額は、不当利得として返還を請求することができる(最高裁昭和43年11月13日判決民集22巻12号2526頁)。


こうした解釈が判例上確立されるまでの経過については、判例の変遷を参照。

利率規制法制の中での位置付け
本法は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約又は賠償額の予定であれば、貸主が事業者であろうと非事業者(いわゆる「個人」)であろうと区別なく適用がある。したがって、本法は、金銭を目的とする消費貸借に限ってではあるが、利息の最高限や賠償額予定の制限に関する基本原則を定めた法令(一般法)ということになる(民法には、利息の最高限や賠償額予定の制限に関する規定がない)。


本法所定の基本原則を修正する法令(特別法)としては、後述のみなし弁済を規定する貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という)43条があり、一定の要件を充たす場合には、制限超過の利息、損害金を支払っても、有効な利息、損害金の支払とみなされる。また、本法には罰則の規定がないから、(みなし弁済規定の要件を充たそうと充たすまいと)制限超過の利息の契約や賠償額の予定をしたり、これらに基づいて利息、損害金を受領しても、直ちに犯罪にはならない。


しかし、いくらでも高利の契約や(裁判外での)取立をしてもよいとか、みなし弁済規定の要件を充たせばいくらでも高利を受領できるというわけではない。単利換算で年109.5%(2月29日を含む1年については年109.8%、1日当たり0.3%)を超える利息の契約又は賠償額の予定をしたり、これを受領し又はその支払を要求すれば処罰される(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という)5条1項、3項、5項)。業として行われる金銭の貸付(少なくとも赤字には陥らないことを目標として、反復継続する意思のもとに行われる金銭の貸付。回りくどい表現だが、反復継続する意思があれば初めての貸付でも業として行われたことになることをいい表すためである。)については、年29.2%(2月29日を含む1年については年29.28%、1日当たり0.08%)を超えれば処罰される(同条2項。ただし、日賦貸金業者が業として行う金銭の貸付については、当分の間、年54.75%(2月29日を含む1年については年54.9%、1日当たり0.15%)を超えた場合のみ処罰される。昭和58年法律第33号8項)。このため、市中の貸金業者は概ね年25%ないし29.2%という約定利率を掲げて営業している。


なお、物価統制令9条ノ2は不当高価契約等を禁止しており、利息は金銭の貸付という給付の対価(金銭を貸し付けてくれたことに対する報酬)に当たると考えれば、上述の利率規制に違反しない行為でも物価統制令9条ノ2に違反することがあり得るが、出資法6条は、金銭の貸付についての利息に関しては物価統制令9条ノ2を適用しないとしている。


また、消費者契約法9条2号は、消費者契約に基づき消費者が負う金銭債務の履行遅滞について、損害賠償の額又は違約金の予定の上限を年14.6%に制限しているが、上述の利率規制は同法11条2項にいう「他の法律〔の〕別段の定め」に当たるとされているので、賠償額の予定は年14.6%に制限されない(ただし、保証会社が保証債務の履行を主債務者に請求する場合の賠償額の予定については、消費者契約法9条2項所定の制限が適用される)。

立法経過
旧利息制限法は、いわゆる太平洋戦争などを契機とするインフレーションによる貨幣価値の変動や、金融機関一般の金利の実情及び動向に鑑みて、日本の市民経済生活に適合しなくなっていたため、これを廃止し、新たに本法が制定された。国会における議論の経過については、国会会議録検索システムの、第19回国会衆議院法務委員会会議録第24号(昭和29年3月22日)、第28号(同月26日)、第29号(同月27日)、第31号(同月31日)、第37号(同年4月10日)第41号(同月16日)、第46号(同月27日)、第47号(同月28日)、同本会議会議録第43号(同月30日)、同参議院法務委員会会議録第11号(同年3月25日)、第15号(同年4月2日)、第22号(同月22日)、第23号(同月23日)、第28号(同年5月1日)、同本会議会議録第41号(同月6日)に速記録がある。


法務省民事局の立案担当者は、本法の趣旨について、上記各法務委員会において、旧利息制限法の解釈を成文化するとともに、商事債権(大ざっぱにいえば、会社組織の金融機関が有する貸金債権)と非商事債権とで違約金に対する規整に差異があった(商法施行法117条)のを廃止し、手数料や違約金などの名目で脱法的に高利の取得を企てる者が出現するのをみなし利息や賠償額予定の制限によって予防したものと説明していた。



判例の変遷
制限超過支払部分の取扱について、判例は、当初、これを残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、本法1条2項、4条2項に照らして許されないと解していた(最高裁昭和37年6月13日判決民集16巻7号1340頁)。これは、大審院が旧利息制限法2条の「裁判上無効」という文言の解釈として採用していた考え方を成文化したという、前述の立法者意思に忠実な解釈であるといえよう。


しかし、最高裁はその後、制限超過の利息、損害金は、本法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される旨判示して(前掲最高裁昭和39年11月18日判決)、見解を改めた。


また、判例は、元本充当の結果過払が生じた場合の処理について、本法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる旨判示し(最高裁昭和43年11月13日判決民集22巻12号2526頁)、その後、制限超過の利息、損害金を元本とともに1回で弁済した事案についても不当利得返還請求を肯定した(最高裁昭和44年11月25日判決民集23巻11号2137頁)。


特に、長期間にわたり借入れと返済を繰り返している借り手については、超過利息が元本に充当され元本が完済された後も返済を続けているため多額の過払いになっていることも多く、近年、金融業者に対する過払金返還請求訴訟が相次いで起こされている。

みなし弁済
みなし弁済(~べんさい)とは、貸金業法43条1項、3項により有効な利息又は賠償の支払とみなされる弁済をいう。


貸金業者は、貸付に係る契約を締結したときは、遅滞なく、内閣府令(貸金業法施行規則)で定めるところにより、所定の事項についてその契約の内容を明らかにする書面(実務上「17条書面」と呼ばれる。)を相手方に交付しなければならない(同法17条1項)。 また、貸金業者は、貸付の契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは、その都度、直ちに、内閣府令(同規則)で定めるところにより、所定の事項を記載した書面(実務上「18条書面」と呼ばれる。)を当該弁済をした者に交付しなければならない(同法18条1項)。これらの規定は、貸金業者が契約内容を説明した書面や弁済の受取証書を借主に交付しないために契約内容や弁済の有無をめぐって紛争が頻発したことから、こうした紛争を予防する目的で置かれたものである。


そして、貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(みなし利息を含む。)の契約又は賠償額の予定に基づき、債務者が利息又は賠償として任意に支払った金銭の額が、利息制限法1条1項、4条1項に定める制限額を超える場合において、貸金業者が17条書面及び18条書面を交付しているときは、その支払は、有効な利息又は賠償の支払とみなされるのである。


これは、前述した判例理論を一定の限度で覆すものであって、消費者保護に熱心な論者の間では廃止論が極めて強い。もっとも、裁判実務上は、みなし弁済の成立が認められる例はさほど多くはない。裁判例においてしばしば問題となる論点は、次のとおりである。


17条書面及び18条書面の交付があったか。
交付された書面が17条書面及び18条書面としての要件を満たしているか。
18条書面の交付が弁済「の都度、直ちに」なされたものといえるか。
借主のした弁済が「任意に」支払ったものといえるか。
借主のした弁済が利息又は賠償「として……支払った」ものといえるか。
みなし弁済が成立しない場合において、超過支払部分の不当利得返還義務を負う貸金業者は悪意の受益者(民法704条)といえるか。
悪意の受益者だとして、不当利得に付される利息の利率は民事法定利率(年5%)か、商事法定利率(年6%)か、それより更に高利率か。


本法撤廃論
消費者金融業界には、本法の撤廃を求める声が強い。小口無担保(かつ繰上返済自由)融資は、制限利息を徴求するだけでは回収コストすらまかなうことができないし、裁判実務上、みなし弁済規定の成立要件が厳格に解されている現状では、一旦得た利息収入を不当利得返還請求によりいつ吐き出させられるかもしれないという不安定さ(ちなみに、みなし弁済規定が成立しない利息も、「収入すべき金額」(所得税法36条1項)として一旦課税されるが、不当利得返還請求によりこれを吐き出した場合、当該吐き出した金額は損金となる。)を免れず(43条問題)、これでは法令の制限内で庶民金融を供給しようとする者はいなくなり、ヤミ金融の被害が拡大する一方であるなどと主張する。また、アメリカ合衆国では利息の制限を州法に委ね、どの州の住民に対する貸付についても貸主が所在する州の利息の制限が適用されているために、貸倒れの危険性に応じた多様な金利市場が成立しており、借主は機動的に融資を受けることができているなどとも主張する。また、昨今流行の市場原理論から、金利規制撤廃を叫ぶ論調もある。


これに対して、以下のような論拠により、本法の撤廃に反対する声も強い。


貸金業者の中には制限利息の範囲内の貸付で営業を継続しているものもあり、本法は庶民金融の障害とはなっていない。
ドイツやフランスでは日本よりもはるかに厳格な金利規制がなされており、日本より金利規制が緩い先進国は英米のみである。(もっともこの点については、ドイツの金利規制は保険料・審査費・会費・明細書発行費・通信費を別途請求可としており、フランスも保証料を認め、また両国とも規制金利を超える違約金を認めるなどの点で厳格とは言い切れないとの指摘がある。)
現状の実態を見てみると、ヤミ金融に手を出す者の殆どは、消費者金融での高利の借金返済のためにヤミ金融から借金をしているのであり、本法を撤廃・緩和して消費者金融に今以上の高利を許せば、今以上にヤミ金融の被害が拡大する。(韓国では、利息制限を撤廃したとたんに年利200%の業者が大量に現れ、それによる自殺者が急増して社会不安が増大したため2002年に利息制限を復活させている。)
多くの自己破産者は、ギャンブルなどの継続的な浪費というよりは、生活費をまかなうために複数の消費者金融からの借金を繰り返し、多重債務者になり支払不能に陥っている。従って、本法を強化して消費者金融が一斉に本法を遵守せざるを得ないようにしたならば、このような多重債務者の増加を相当程度抑制することができ、消費者金融業者の収支を圧迫する最大要因である自己破産の件数を減らすことができるのであって、結局業界の利益になるはずである。
消費者金融から借金をする者の多くは、他の消費者金融から借金をしていて、それを返済するために別の消費者金融業者から借り入れを繰り返すことや、消費者金融にしても融資を受ける側の収入をきちんと調べずに、他社からの借り入れ件数があっても返済能力を無視した貸し付けをおこなう、いわゆる過剰融資の問題がある。このような消費者は、消費者金融の提示する金利が高すぎるから借入を控えるという行動を取る余裕がなく、当事者が冷静で合理的な選択を行って取引に入るか否かを決定するという、市場原理が機能する大前提を欠いている。
近年、一部の業者には、政治団体を結成、業者有利となる法制度にすべく政府与党に対して働きかけを行なおうとする動きもあり、消費者団体・弁護士会から非難されている。





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